GMO VenturePartnersが振り返る、Uzabase上場までの8年

■厳冬の2008年の船出から上場まで

 

2008年、それは今では思い出す事も難しい、資本市場が世界中で氷河期になったようなあの時代。
そんな時期に勇気をもって飛び出した彼らが創業したのは今ではNewsPicksを擁し、それなりの知名度のあるUzabase社なのだが、2009年に最初の投資をしたときはまったくニュースにならなかったのだから、今では想像もつかない事だ。

 

GMO VenturePartnersとしては9社目の上場となるがこれまでの上場と異なるのが、創業前の相談から始まり、最初のファイナンスから最後のファイナンスまで投資家として唯一全ラウンドに参加させて頂き、上場までお供出来た事だろう。
(GMO VenturePartnersが運営するファンド、ブログビジネスファンド、GMO VenturePartners3からの投資)

 

 

そのため結果的に、創業から上場までのプロダクト戦略・事業戦略・ファイナンス戦略・上場準備時の議論や本日の上場まで、その全てに当事者として参加しつつ、その一部始終を拝見する機会を得た。

その経験から感じる注目点を挙げるならば、

 

■6つの注目点とその理由

 

1. 安定成長可能なストック型B2B事業から始まり、高い変化率=アップサイドが上がるメディア事業を2つ目の事業として上乗せする事業展開の稀有な成功例

狙う人は多いが、事業に求められる組織遺伝子が違いすぎるため実現は容易ではない。

 

2. 日本から始まり、上場前に海外展開にも成功しつつある、希少な国境突破事例
(開示資料における今期の海外売上比率7.6%、SPEEDA単体では9.8%。これは上場ネット大手のそれよりもはるかに高い)

 

3. ゼロから起業し、特定の事業スポンサーも親会社もなく自分達の貯金からスタートし、シードからシリーズDまでVC投資をフル活用し、上場に至った模範例

 

4. 生粋の起業家(学生事例等若い頃から商売で叩き上げた)ではなく、大企業で修行し独立し起業した、所謂大企業スピンオフを志す者にとって希望を与える事例


5. 真の意味での共同創業者。特に海外では簡単にCo-founderという言葉を使うが途中分裂は多いし企業の成長に合わせてフォーメーションが変わる事は常であるが、Uzabaseの3名は違う。残念ながら詳細は書けないのだが、ここまで強固な関係で結束した共同創業者達は見たことがない。

 

6. ファイナンスの節目における戦略目標を毎回見事にクリアし、次の戦略目標とファイナンスに駒を進めてきたという、事業とファイナンスの両輪が綺麗に決まった事例

 

等が、特筆に値するだろう。

 

■ファイナンス経緯

 

2009年8月、3000万円

GMO VenturePartners(ブログビジネスファンド)とマネックス証券中心

SPEEDA開発後の展開資金。目標はSPEEDA事業のPOCであり黒字化。実際に黒字化した。

 

 

2012年10月、約2億円

グロービス、GMO VenturePartners(追加投資)

SPEEDAの海外展開資金。ここから海外展開のための投資により赤字を大きく掘って行く。
http://www.uzabase.com/news/News_20121009.pdf
http://jp.techcrunch.com/2012/10/09/jp20121009uzabase-gets-200m-yen/

 

2014年9月、約4.7億円

伊藤忠テクノロジーV、YJ、講談社、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、新生銀行、マネックスベンチャーズ、GMO VenturePartners(追加投資)

NewsPicks事業=メディア事業のための投資であり、戦略パートナーの確保。
http://www.uzabase.com/press/pressfinance20140901/

 

 

 

2015年4月、約3億円

グロービス、GMO VenturePartners(追加投資)、伊藤忠テクノロジーV、マネックスベンチャーズ

NewsPicks事業加速化のための投資

 

この4つの勝負を全て成功させてきた。全てがトーナメントであり、全勝しなければ次がない。

2つの事業と海外展開が始まっている状態、すなわち、高いアップサイド=大きなTAMを資本市場に提示出来る状態で、上場を迎える事が出来た。
解説すればきりがないくらい奥深く、思い出せば熱狂的な瞬間の連続だった。

 

■梅田さんご自身に聞く、成功するファイナンス戦略
http://gmo-vp.com/interview/2014/03/post-1.html

 

■さらなる考察・どのような会社、経営チームが上場まで行けるのか、(時価総額)1000億円企業になれるのか。

 

創業の事業を成功させ、その事業一本で上場する。
その事業の国内展開だけではやがて成長の限界がくるし、ひとつの国内事業だけで1000億円の評価に達する程の規模が出ることも稀なので、いずれにしても次の事業を開発する。
しかし次の事業が、なかなか成功しない。
柱になる事業の立ち上げ、はそれほど簡単なものではない。
新規事業は基本的には失敗するものなのだ。
海外展開にも苦戦する。エージェントに持ちこまれて買収した海外の会社は火を噴く。
最初の事業を成功させたからといって、事業立ち上げや買収のプロではないので、二つ目の事業も、海外展開も、買収も、成功するとは限らないのだ。

よって上場後に成長鈍化、減益状態に陥る。
このような会社は挙げればきりがないくらい多い。

 

だが今日大手として成長し続けている会社を見れば、曲折を経たとしても新規事業を二回目、三回目、と成功させて成長カーブを継続させている会社なのだ。
彼らに共通しているのは、事業立ち上げのコツのようなものを組織として知っており、100%ではないまでも、一定程度の確率で成功させる点にある。
再現性だ。
この組織としての再現性は、ハードワークであったり、優秀なメンバーをひきつけ・維持・益々の活躍を長期的に促す力であったり、つまりは組織文化であったりするのだが、それが、「有望事業を順次追加してTAMを引き上げていく組織能力」なのだ。
そしてそれこそが、企業価値の持続的な成長、やがて1000億、5000億円に至る道である。

 

Uzabase社には、この再現性、「有望事業を順次追加してTAMを引き上げていく組織能力」がある。

 


資本市場との信頼関係の構築が今日から始まる。

これからが、長く、長く、長い。

10年後を期待したい。

 

上場 | 15:00 | comments(1) | trackbacks(0)

        
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