コロナ禍で多くのスタートアップは黒字化が急務になっている。言うまでもなく今後、投資家が激減するからだ。次の増資が成立せず「サドンデス」になる状態からすぐに抜け出す必要があるので、既存株主は「人員削減も選択肢に早急に黒字化を」と主張する。
しかし、実行する側からすると簡単なはずがない。私の起業時の話だが、ベンチャーキャピタル(VC)をやめて実行側に移った創業2年目に、ドットコムバブルが崩壊し大不況がやってきた。できたばかりのネット産業が壊滅しそうな衝撃波だった。
早い話が当社も固定費を3分の1にしなければならなくなった。前途洋々のビジョンを語って集めた社員を突然苦境に陥れることになった。
ゼロから作った決済サービスを止めたくない。ベンチャーの我々を選んでくれた加盟店の期待を裏切れない。しかし金がない。社長自らの給料はゼロの月もあった。長女のミルク代のために帰宅後の缶ビールをあきらめた。次第に社員や幹部が辞めていった。
「株主リターン」「上場」という言葉は棚上げした。このサービスをどうしても諦めたくない社員とともに、自分も営業マンとして単身で会社訪問し、要望を聞き小さな改善を繰り返した。マーケ担当もいなくなったので自分でやった。それまでやれていなかったインバウンドマーケティング(顧客がウェブ検索などの結果向こうからやってくること)へ抜本的転換をした。顧客の獲得効率は3倍になった。
やむを得ない事情で競合他社に乗り換える顧客に、ある社員が「円滑な乗り換えになるよう当社のサービス利用終了後も2カ月無償でサポートします」と言った。意をただすと「長年使っていただいたお客様です。当然です」と胸を張った。短期的には自社の利益にならずとも顧客のために行動するという創業時からの文化が不況の時に研ぎ澄まされていくのを感じた。他の決済会社への乗り換えを社長が命じているのに現場社員が頑として阻止してくれた顧客もあった。
10名足らずのメンバーで2年間耐える中、顧客の解約率が創業以来の低い数字になった。トンネルの出口が見えた。不況のどん底から売り上げが4倍になっていた。黒字化した瞬間は今でも忘れない。赤字の決算しか見たことがなかった経理担当が「間違いではないですか」と何度も財務データを見せに来た。数千円だったが、黒字だった。
世の中では景気回復のきざしが観測され始めていた。その後、資本再編し現在に至るが、今もご利用いただいている当時のお客様には感謝の他ない。経営者にとって一旦縮小、特に人材部分は身を切られる思いだが、それでも成長する方法はある。我々にとってそれは顧客にとことん向き合うことだった。
]]>GMOペイメントゲートウェイ副社長
兼 GMOベンチャーパートナーズファウンディングパートナー村松竜
新卒でジャフコに入社。担当していたGMOインターネットの上場後に決済のスタートアップを起業。
2005年にGMOベンチャーバートナーズを設立。12年よりシンガポールを拠点に活動
この最初の投資から、まさにちょうど10年です。
その後6年にわたり、追加投資しつつ今日に至りました。当時の時価総額は今日、100倍以上になっています。
2009年から、桁違いによい経営チームでした。
今の経営チームのほぼ全員が、設立1年の10年前からそろっていた事は、驚異的です。
当時はリーマンショックの直後で、
もう上場なんて誰もしない
VCの時代は終わり、VCは解散が相次ぐ
もう誰も起業しない
本当にそういう時代だったんですよ。
その時に平然と、敢然と起業したのが寺田さん達で、しかも最初からフルセットそろっている経営チーム。
このあたりからも、いかに異質で異例な、将来の大成功を予感させる船出だったか、がわかるというものです。
とはいえ、名刺管理?という時代でもありました。
競合ソリューションも正直ありました。
自社含めてどんどん導入し、初期は営業も相当お手伝いさせて頂き、というのはありましたが、
予想を大幅に上回る成長を遂げられました。
結局、未来を決めるのは、圧倒的な信念・変わらぬ鉄の意思、で冬でも嵐でもやりきる、事だと思います。
「中華の統一」ですね。
日経産業コラム「1000億円突破には鉄の意志」
「1000億円を超える会社には1つの共通点、それは、リーダーに人間的な魅力的があるだけでなく、とてつもなく大きな目標を達成する鉄の意志を10年単位で持ち続ける超人的な意思力がある、という事です。」
関係者の皆様、おめでとうございます。
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もちろん、これまでもオークションサイトもあれば、簡単なショッピングサイトツールはあった。
しかしやはり一定のプロ意識と努力が必要な行為である事には変わりはなく、コンビニにふらっと立ち寄るとか、ベッドに寝そべったままスマホをいじるような簡単さかと言えばそうではなかっただろう。
日常に溶け込むレベルで簡単に売ったり買ったりするインフラ。
メルカリが変えたのはこの点であろうと思う。
他にも様々なイノベーションを実現した会社が生まれネット業界が発展してきたが、
今までなかったユーザ行動を国民的な規模と範囲で創出した、のはやはり3社目なのかもしれない。
そのような節目の会社は代々1兆円のバーを越えてきた。
世界に行けるかどうかは簡単な話ではないが、日本の悲願として是非声援をおくりたい。
ではそのメルカリ、の駆動力とは何か。
根底にあるものを一つ挙げるならば、創業者の圧倒的な目線の高さと、その継続、だと思う。
その目線の高さはどのくらい高いかと言うと、妥協を許さず果てしなく高い。想像のはるか上を行っている。
多数の起業家と接してきた感覚からしても、普通では考えられない高さなのである。
それがコアな磁石となり、連続起業家や大幹部が集まってくる。
この会社の大きな特徴であり強みは、連続起業家が創業メンバーは無論幹部レベルにまで他にはないレベルで無数に集まっている点でありそのため、経営の執行力が極めて高く、早い。
コンセプト自体は、実は世界で最初でも日本で最初でもなかった。機能面では類似している他社、他プロダクトが存在はしていたが、テーマの設定、見ている距離と時間、高さが違った。
最初からキャズムを飛ばした国民アプリを志向していた。
スマホ普及の波に乗ったとか、最規模CMの成功とか、メルカリの成功要因は多々論じられているが、同じ時期に同様のチャンスがあった会社は他にもある。
ここではこの一点「圧倒的な目線の高さと、その継続」だけ強調しておきたい。
GMO VenturePartnersとしてはローンチ半年後、創業時のラウンドに続く14億円の最初の本格ラウンドとなった2013年の2月のラウンドで出資させて頂いた。
当時、無料サービスで売上がゼロの状態でいつ、いくらの売上利益が創出されるかなど全く想像の世界で投資判断する必要があったのだが、時価総額は当時としても破格だった。
今の相場感覚では数百億円くらいだろうか。売上ゼロでだ。
今思い起こしても大変なラウンドだったと感じる。
https://about.mercari.com/press/news/article/100million_downloads/
こちらの発表のとおり今では1億DL突破しているが、
投資時のあたりでは2013年12月に100万ダウンロード
http://thebridge.jp/2015/02/mercari-surpass-10m-downloads-in-2years
増資後1年で1000万DLに駆け上がって行った
投資時から4年で100万が1億DLになった訳で、DL数だけではなく事業規模もほぼ比例して100倍レベルになった。
この「ご縁」は、結果的に今思うと僥倖としか言いようがないが、これからも諸方面にてお手伝いして参ります。
※GMO VenturePartners投資先13社目の上場となります
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https://r.nikkei.com/article/DGXKZO28947990T00C18A4XY0000…
GMOペイメントゲートウェイは上場して13年になりました。
上場時の唯一の事業だった決済代行事業を基盤にしつつ、今では広告、送金、レンディング、後払い、プラットフォーム事業、スマホ決済事業、グローバル決済等、多様なプロダクトを立ち上げてきました。
中には、主力事業であるH1領域から、その延長上の領域である「H2」領域、そして飛び地である「H3」領域への進出もあり、困難を極めたものもあります。
この寄稿は、5年前に日本ではいち早く発案したスマホ決済の、立ち上げ時の風景。まさにH3です。
結果としてこれが、スマホ決済時代の先駆けとなりました。
特にH3は経営リソースも経営マインドすらゼロから調達する必要があり難しいものがありますが、メンバー一丸となり取り組めてきました。
スタートアップの最初の事業立上げも壮絶に大変ですが、上場後の利益成長とバランスさせながらのこうした新規事業創出も、また別の難しさがありますが、面白さ・熱狂もあります。
この「事業会社における実体験」をGMO VenturePartnersの投資先の応援にも活かして行きます。
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この6年で、投資のピッチのために週末に飛んできたのは彼1人である。
そしてその土曜日17時。
彼が私に説明した「投資家向け資料」はたった1枚だった。その1枚を、彼は2時間もかけて説明した。正確にはもう少しあったが、彼の会社の将来性、プロダクトのすさまじさを物語るのはそのたった1枚だった。
だから私もその1枚だけを見てとことん質問した。「何故こうなのか。この曲線は何故こうではなく、こう進んでいくのか。」「こうすればもっとこうなるのではないか。」
そこには、プロダクト、事業の特徴と課題、上場までの”スケール”の可能性の示唆、その全てが荒削りでも全て埋め込まれていた。
それが「ラクスル」であり、松本さんだった。
その1枚とは「リテンション・レート」つまり継続率のチャート。今後の成長を占う1枚である。
4年間で四半期の売上は40倍になり、本日、ラクスルは上場承認を受けることになった。
GMO VenturePartnersとして12社目の上場となる。
彼が使ったあの1枚で、私は投資を決めた。その1枚でとことん議論した時、彼がいかに自分の事業の重要性とプロダクトの可能性を「とことん考え」「とことん行動している」かがよく分かったからだった。
今日上場承認を受けた屈強なラクスルチームは松本さんがゼロから創っていかなければならなかったのだが、松本さんはそれをやりきった。集まってきたメンバーの凄さは言葉にするのが難しい。なぜそこまで人が集まるのか、と時々不思議になったがやはり原点はあの土曜日の夜見た、松本さんの思考の執念なのではないか。そこに多くの優秀なメンバーも惹かれたのだと思う。鮮明なビジョン、それも大切で、ラスクルにも明確なビジョンがもちろんある。しかしそれだけではいけない。その裏にいかなる執念があるか。それがスタートアップが、一部の業界関係者に知られる状態(ファイナンスステージで言えばシリーズA)で終わるか、上場してさらにそこから飛躍しつつ多くの会社の仕事のあり方、一般消費者の生活のある部分を変えるに至るか、を分ける決定的な分岐点、なのだと思う。
そんな会社があるのか?と疑うような会社、それが、キャリア決済代行サービスを世界で展開するBOKUです。
全世界でApple、Google、Spotify等のコンテンツの巨人の決済を、クレジットカードでもなく、ウォレットでもない、モバイルキャリアという、全世界の共通インフラを使って課金するサービスを展開する、Paymentech, Fintechスタートアップです。
そのBOKUがいよいよロンドンAIM証券取引所に上場しました。
GMOペイメントゲートウェイと、事実上日本初のフィンテック特化のファンドである、GMO Global Payment Fundから出資しています。
GMO Global Payment Fundは、まだFintechという言葉もなかった2013年の設立以来、「アジアで活躍する決済系Fintechスタートアップ」への投資に特化しすでに13社に投資していますが、
このファンドからの第一号上場となりました。
GMOVenturePartnersとしては通算11社目の上場となります。
日本以外では上場というExitは非常に珍しいです。大半は他社への売却なのでこれは稀有な事例と言えます。
GMOVenturePartnersの投資としても、日本はもちろん、NYSEに加えてロンドンと、世界3極での上場実績になりました。日本以外の市場への上場は制度も全く異なるためわからない事も多く、投資家としての苦労も多いですが、
実績を積む事で今後の投資先のExitシナリオの多様化、企業価値の創造・最大化に貢献していきます。
https://www.boku.com/
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■厳冬の2008年の船出から上場まで
2008年、それは今では思い出す事も難しい、資本市場が世界中で氷河期になったようなあの時代。
そんな時期に勇気をもって飛び出した彼らが創業したのは今ではNewsPicksを擁し、それなりの知名度のあるUzabase社なのだが、2009年に最初の投資をしたときはまったくニュースにならなかったのだから、今では想像もつかない事だ。
GMO VenturePartnersとしては9社目の上場となるがこれまでの上場と異なるのが、創業前の相談から始まり、最初のファイナンスから最後のファイナンスまで投資家として唯一全ラウンドに参加させて頂き、上場までお供出来た事だろう。
(GMO VenturePartnersが運営するファンド、ブログビジネスファンド、GMO VenturePartners3からの投資)
そのため結果的に、創業から上場までのプロダクト戦略・事業戦略・ファイナンス戦略・上場準備時の議論や本日の上場まで、その全てに当事者として参加しつつ、その一部始終を拝見する機会を得た。
その経験から感じる注目点を挙げるならば、
■6つの注目点とその理由
1. 安定成長可能なストック型B2B事業から始まり、高い変化率=アップサイドが上がるメディア事業を2つ目の事業として上乗せする事業展開の稀有な成功例
狙う人は多いが、事業に求められる組織遺伝子が違いすぎるため実現は容易ではない。
2. 日本から始まり、上場前に海外展開にも成功しつつある、希少な国境突破事例
(開示資料における今期の海外売上比率7.6%、SPEEDA単体では9.8%。これは上場ネット大手のそれよりもはるかに高い)
3. ゼロから起業し、特定の事業スポンサーも親会社もなく自分達の貯金からスタートし、シードからシリーズDまでVC投資をフル活用し、上場に至った模範例
4. 生粋の起業家(学生事例等若い頃から商売で叩き上げた)ではなく、大企業で修行し独立し起業した、所謂大企業スピンオフを志す者にとって希望を与える事例
5. 真の意味での共同創業者。特に海外では簡単にCo-founderという言葉を使うが途中分裂は多いし企業の成長に合わせてフォーメーションが変わる事は常であるが、Uzabaseの3名は違う。残念ながら詳細は書けないのだが、ここまで強固な関係で結束した共同創業者達は見たことがない。
6. ファイナンスの節目における戦略目標を毎回見事にクリアし、次の戦略目標とファイナンスに駒を進めてきたという、事業とファイナンスの両輪が綺麗に決まった事例
等が、特筆に値するだろう。
■ファイナンス経緯
2009年8月、3000万円
GMO VenturePartners(ブログビジネスファンド)とマネックス証券中心
SPEEDA開発後の展開資金。目標はSPEEDA事業のPOCであり黒字化。実際に黒字化した。
2012年10月、約2億円
グロービス、GMO VenturePartners(追加投資)
SPEEDAの海外展開資金。ここから海外展開のための投資により赤字を大きく掘って行く。
http://www.uzabase.com/news/News_20121009.pdf
http://jp.techcrunch.com/2012/10/09/jp20121009uzabase-gets-200m-yen/
2014年9月、約4.7億円
伊藤忠テクノロジーV、YJ、講談社、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、新生銀行、マネックスベンチャーズ、GMO VenturePartners(追加投資)
NewsPicks事業=メディア事業のための投資であり、戦略パートナーの確保。
http://www.uzabase.com/press/pressfinance20140901/
2015年4月、約3億円
グロービス、GMO VenturePartners(追加投資)、伊藤忠テクノロジーV、マネックスベンチャーズ
NewsPicks事業加速化のための投資
この4つの勝負を全て成功させてきた。全てがトーナメントであり、全勝しなければ次がない。
2つの事業と海外展開が始まっている状態、すなわち、高いアップサイド=大きなTAMを資本市場に提示出来る状態で、上場を迎える事が出来た。
解説すればきりがないくらい奥深く、思い出せば熱狂的な瞬間の連続だった。
■梅田さんご自身に聞く、成功するファイナンス戦略
http://gmo-vp.com/interview/2014/03/post-1.html
■さらなる考察・どのような会社、経営チームが上場まで行けるのか、(時価総額)1000億円企業になれるのか。
創業の事業を成功させ、その事業一本で上場する。
その事業の国内展開だけではやがて成長の限界がくるし、ひとつの国内事業だけで1000億円の評価に達する程の規模が出ることも稀なので、いずれにしても次の事業を開発する。
しかし次の事業が、なかなか成功しない。
柱になる事業の立ち上げ、はそれほど簡単なものではない。
新規事業は基本的には失敗するものなのだ。
海外展開にも苦戦する。エージェントに持ちこまれて買収した海外の会社は火を噴く。
最初の事業を成功させたからといって、事業立ち上げや買収のプロではないので、二つ目の事業も、海外展開も、買収も、成功するとは限らないのだ。
よって上場後に成長鈍化、減益状態に陥る。
このような会社は挙げればきりがないくらい多い。
だが今日大手として成長し続けている会社を見れば、曲折を経たとしても新規事業を二回目、三回目、と成功させて成長カーブを継続させている会社なのだ。
彼らに共通しているのは、事業立ち上げのコツのようなものを組織として知っており、100%ではないまでも、一定程度の確率で成功させる点にある。
再現性だ。
この組織としての再現性は、ハードワークであったり、優秀なメンバーをひきつけ・維持・益々の活躍を長期的に促す力であったり、つまりは組織文化であったりするのだが、それが、「有望事業を順次追加してTAMを引き上げていく組織能力」なのだ。
そしてそれこそが、企業価値の持続的な成長、やがて1000億、5000億円に至る道である。
Uzabase社には、この再現性、「有望事業を順次追加してTAMを引き上げていく組織能力」がある。
資本市場との信頼関係の構築が今日から始まる。
これからが、長く、長く、長い。
10年後を期待したい。
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